筆者はNASにDS923+を使用中
Synology Diskstation DS923+をスマホとPCの共有ストレージ、外部とのファイル共有、WordPressのテストサーバーとして便利に活用しています。
そんなDS923+の後継としてSynology Diskstation DS925+が発売されました。
普通であれば、予算が問題なければ新しい方が良い!となるものですが、DS925+は製品としては後継でも、ポリシーが大幅に変わっており、新製品だからとよく調べずに購入すると「使えない!」という困った事態になることがありますので注意が必要です。
私がDS218からDS923+に移行したのは、時期的に正解だったようですね。
DS923+とDS925+の違い
DS923+は2023年製で4ベイ+オプションで5ベイ追加(合計9ベイ)に対応したPlusシリーズ。DS925+は2025年製です。
2025年製のSynology DiskStation Plusシリーズは、互換性リストにないストレージは使用不可になりました。DS925+ だけではなく、DS725+ と DS425+も同じです。新規購入では接続するHDDは互換性リストにあるSynology HDDを一緒に使用しないと使えなくなりました。 古い機種からの移行の場合は同じストレージ構成を引き継いで使うことができますが、構成が変わる場合は互換性リストにあるストレージ(HDD/SSD)を使う必要があります。
DS925+で良くなったところ
1. CPUのマルチスレッド性能が向上
- DS923+:AMD Ryzen R1600(2コア4スレッド / ベース 2.6GHz – ブースト 3.1GHz)
- DS925+:AMD Ryzen V1500B(4コア8スレッド / ベース 2.2GHz – ブースト 3.6GHz)
DS925+ではスレッド数重視のCPUに変更され、複数の処理を同時に実行する環境で性能が発揮されます。ブーストクロックが高いので、ベースクロックが低くなっていても動作コア数が少ないときは性能が高くなります。
2. 標準搭載のLANポートが性能アップ
- DS923+:1GbE x2
- DS925+:2.5GbE x2
標準LANポートが2.5GbEになり、最大転送速度が約120MB/sから約300MB/sに向上。RAIDやストレージの構成によっては、PC内蔵HDDよりも高速な読み書きが可能になります。
DS925+で悪くなったところ
1. 互換性リストにないストレージは使用不可
2025年5月現在、使用できるのはSynology純正HDD・SSDのみ。互換性リストにないストレージではDSMのインストールやストレージプールの作成・拡張ができません。
旧Plusシリーズで構築したディスク環境は継続利用可能ですが、DS925+上での再構築や拡張は制限されます。
DS925+ 内蔵ストレージの互換性リスト:
2. 拡張スロットの廃止
DS923+は10GbE対応のLANカードが利用可能でしたが、DS925+では拡張スロットが廃止され標準の2.5GbE×2基のみとなりました。オプションで10GbEにアップグレードすることができません。
3. CPUのシングルスレッド性能が低下
マルチスレッド性能は向上しましたが、ベースクロックが下がったことでシングルスレッド性能が低下しています。1つの処理で負荷が高くなる場面以外では気にする必要はありません。
4. NVMe SSDも制限
DS923+ではPCで余ったSSDを活用するなど、純正以外のNVMe SSDもキャッシュ用途で利用可能でしたが、DS925+ではキャッシュ用でも純正品しかつかえなくなりました。(ストレージプールとして使う場合は、もともと純正品のみの対応です)
5. 拡張ポートがUSB-Cに変更
- DS923+:eSATA(DX517に対応)
- DS925+:USB-C(DX525に対応)
拡張ポートが従来のeSATAからUSB-Cに変更されたことで、旧拡張ユニットDX517は使用できなくなりました。DX517を使用している構成から移行する場合はDX525の購入が必要になります。その場合はDS1825+など拡張ユニットを使わなくてもベイ数が多いモデルを選ぶのも良さそうです。
USB-C接続での詳細な仕様は公表されていませんが、現在ではあまり使われなくなったeSATAから、より一般的なUSB-Cへの移行という形です。
ただし、これによりNAS本体と拡張ユニット間の転送速度が向上するわけではなく、SATA通信をUSB通信に変換する過程でボトルネックが発生する可能性があります。性能は今までとほとんど変わらないという感覚で良いでしょうね。
DS925+は個人向けではなくなった?
DS925+は現時点(2025年5月)ではSynology純正品しか使用できず、拡張性や互換性は低下。コストも大きく増加しています。
法人利用では、非純正使用によるトラブルを避けられ、サポート面でも安心です。しかし個人利用では高コストがネックになります。PCで余ったHDDやSSDを活用することができません。しかも、流通量の少ない純正ストレージは安くなりづらくてコスト面で不利です。
Synologyを使うのやめようか?
この選択は難しいです。
共有ストレージとして使いたいだけであるならば、もともと高価なPlusシリーズを選ぶ必要がないですし、SynologyのDSMとパッケージなどSynology DiskStationの仕組みが気に入って使っている場合は他社製に移る意味がありません。
なぜこんなことに?
Synologyはなぜこのような顧客を減らすようなポリシー変更をしたのでしょうか?
大きな理由として、サポートの負担が企業として看過できないほどの負担になってるから!や、Synology 純正品の開発コストを回収できないとやばい!といった内部事情があるのかもしれませんね。
客を増やすためではなく客を失う恐れが大きなポリシー変更です。それでもこうするしかない内部事情があるのでしょう。
非純正によるトラブルのサポートを求められても、会社が違うものまで面倒を見れるわけがありません。モンスタークレーマーが増えると、そのような人たちには販売すらしたくない!と根本的な対策を取りたくなる気持ちはまじめに仕事している人たちはみなさん理解できるのではないでしょうか。
部品不足の時代で生産数が絞られているなら尚更です。安くたくさん売るだけの数が作れないのなら、販売する側に負担の少ない売り方をするのは不思議ではありません。
Synology 純正のHDDやSSD、それなりに売れなければ大きな負担となってしまいます。数が売れなければ安くもできません。設計が古くて容量が少なく販売価格が高ければ尚更売れなくなってしまいます。
というのはあくまでも個人の見解であり、実際のところ中の人が営業トークではなく本音で語ってくれないと分かりませんが、負担のあるサポートは避けたい、売れる数は減っても良い、純正品をもっと使って貰いたい、という認識があってこのようなことになっているのはあながち間違いでは無いと思います。
Synologyと似たようなことがしたいというのならばQNAPですね。ハードウェアの性能と価格ではもともとQNAPが優位です。ですが使いやすさやトラブルの少なさやセキュリティーの安心面に難があるのでSynologyを選んできてると思います。そのような場合は他社に替えがないのが現状です。
コストが許容できれば問題ない
HDDのみであれば純正品によるコストの差はそれほど高くありません。8TBモデルではWD Red PlusなどNAS用のHDDと比べて特別大きな価格差ではありません。WD Red Proよりは安く、WD Red Plusは回転数が低くて速度も遅くなります。Synology 純正も6TB以下のHAT-3300シリーズは回転数が低くて低騒音になりますが、8TBはHAT-3310シリーズとなり7,200rpmで高速なモデルとなっています。純正品でなくても使えるDiskStationを使っていても純正のHDDを選んで使う人はそれなりにいます。
SSDキャッシュを搭載しない場合、低騒音の4TBを4台使ったRAID5での運用で速度を稼ぐのはアリだと思います。
(RAID5で早くなるのは最大転送速度のみで、ランダムアクセス性能は高くなりません、寧ろ応答性などが下がります。メモリの空き容量が多ければメモリキャッシュである程度カバーすることができます。)
新規にHDDも購入して使う場合はあまり問題にはならないでしょう。個人的には価格が高くなりますが今は8TBよりも12TBが性能が高くて消費電力が少なくなっているのでおすすめできます。
NVMe SSDによるSSDキャッシュは効果が高いですが、純正品は価格が高すぎるので、SSDキャッシュよりもメモリを増設してメモリの空き容量がキャッシュとして活用されるのが有意義かも知れません。メモリに関してはECCに対応していれば非純正品でも使えるのかは分かりませんでした。メモリは信頼性の面で純正品がおすすめです。使い方によっては標準4GBに8GBを増設するだけでもかなり変わります。
私のDS923+では影響力が大きい順に、1GbEを2.5GbEにする>メモリを増設する>SSDキャッシュを使う、でした。DS925+では標準で2.5GbE対応なので、予算に問題なければ純正HDDとメモリの増設で安心して快適に使えるかと思います。SSDキャッシュを使用するのであれば、同容量を2枚接続して書き込みキャッシュを有効にするのが快適です。1枚の場合は読み込みキャッシュのみとなります。書き込みキャッシュには故障してデータが壊れないように2枚によるRAID 1構成が必須となっています。
DS925+の問題は純正でないと駄目(互換性リストに純正以外が追加される可能性がなくなったわけではないはず!)だからコストが高くつく!という一点ですね。コスト面で問題なければ安心して使える構成となります。
急な故障でもDS925+で復旧可能?
旧機種(DS923+など)で使っていたHDDを、同じ順番でDS925+に差し替えればそのまま使えるケースもあります。ただし再構築や拡張は制限されます。そこからは互換性リストにあるストレージに置き換えながら使っていくことになります。
旧機種で使っていたディスクを新しい機種に接続してデータを引き継ぐ方法はDS925+でも有効です。前機種から引き継ぐのであれば、互換性リストにないHDD/SSDでも使えます。
Plusシリーズではない2ベイのDS218から4ベイでPlusシリーズのDS923+への移行ではディスクを引き継ぐことで簡単に移行することができました。DS925+へも同じ方法で使えるようですが、互換性リストにないストレージが使われていることで警告表示などが目立つようです。
旧機種からの引き継ぎではなく新たに追加セットアップする場合はDS925+の互換性リストに載っていないと使用することができません。DSMのインストールもできないので何もできません。
願わくば、純正品以外もサポートを受けないなどの条件付きで認め、利用者責任で使えるようにしてもらいたいものです。
おまけ: 接続の規格とデータ転送速度について
ポートの種類 | 規格 | 理論上の最大速度(MB/s) |
---|---|---|
LAN | 1GbE | 約125 MB/s |
LAN | 2.5GbE | 約312.5 MB/s |
LAN | 5GbE | 約625 MB/s |
LAN | 10GbE | 約1250 MB/s |
USB | USB 2.0 | 約60 MB/s |
USB | USB 3.2 Gen1 (USB3.0) | 約625 MB/s |
USB | USB 3.2 Gen2 | 約1250 MB/s |
SATA | SATA2 | 約375 MB/s |
SATA | SATA3 | 約750 MB/s |
eSATA | eSATA(SATA3) | 約750 MB/s |
規格 | 理論最大 | 最大実効速度の目安 |
---|---|---|
1GbE | 125 MB/s | 90〜110 MB/s |
USB 3.2 Gen2 | 1250 MB/s | 900〜1100 MB/s |
SATA3 | 750 MB/s | SSD:500〜550 MB/s HDD:100〜300 MB/s |
HDDは内部の円盤(プラッタ / 磁気ディスク)を回転させて読み書きする構造のため外周と内周で速度差があります。現在の高性能モデルでも最大300MB/s前後が限界で、ディスクの外周から内周にかけて速度は徐々に低下します(容量の後ろの方ほど遅くなります)。
NASのRAID構成ではHDDであっても複数のHDDに分散アクセスすることで1台のHDDの性能を超えた転送速度を実現します。SynologyのSHRシステムでは追加されたHDDの個数によって自動でRAIDがアップグレードされるので使いやすいです。(SHRではHDDが2台の場合はRAID 1に、3台以上になるとRAID 5に変わる)
2.5GbE以上の接続であれば、システムメモリの増設(空き容量がキャッシュとして活用される)とSSDキャッシュの設定により、とても快適に動作します。
詳しくは以下の記事を参照してください。
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